1999.11月発行瓦版より

 

 

 

キッチンより

 

 

 

今年9月(1999年)に入籍をしました。一緒に生活を始めたのは4月

からですが、今まで生きてきた中で、いちばんキッチンに立つ時間が多く

なりました。

およそ9年ぐらい一人暮らしをしてきた中で、自炊していた時期もあった

のですが、いつしか仕事の方が大事になってしまい、特に夜ご飯は、気が

ついたら夜遅くになっていて、軽くすましてしまうこともよくありました。

 

もともと薄味の粗食好みだったせいもあり、食べるときには、野菜や豆類、

魚などを好んで食べていたので、不規則なわりには胃に負担がかかったり

することは無かったように思います。そのうえ健康で風邪もひかず、普通

に体力もあったので、逆にそこに甘えてしまい、ますます食に対する意識

がどんどん薄くなっていたようです。

 

一緒に暮らすことを決める前に、彼にも「私は仕事を続けていくし、多分

そんな主婦らしくマメにご飯とか作らない気がする。」と言っていた位です。

私自身「もう、そんな一般常識に合わせて、少しでも主婦らしくうまく

やろうとか、自分自身に無理をさせたり、頑張ったりすることはできない。」

ということを、それまでの経験で感じていたからです。

しかし、それを聞いた彼も「ええんちゃう。自分のペースで、ぼちぼち

やったらええやん。」とあっさりと答えたのでした。

(その時は、なんて理解のある人なんだ、とちょっと感動しました。)

 

 

ところが、実際一緒に暮らし始めると、思っていたよりも「私はお料理が

好きだ」ということが判明しました。

じゃあ、今までは何だったんだろう、と思ったら、山ほど思い当たることが

出てきました。

例えば、前なら、今の彼に言ったように「私はそんな主婦らしくご飯とか作

らない気がする。」なんて、自分の評価が下がるようなことは言えなかった

わけです。昔付き合っていた人に対しても、作れないわけではないのに、料

理を作って食べてもらうときには、どう評価されるかがとても怖かったし、

できれば「料理が下手」とは思われたくない私がいたわけです。

だから頑張ってた。

結局は自分自身がどう評価されるかということを恐れていたわけです。

 

それから、子供のころから、いろいろと家事の手伝いを「やらされた」という

記憶がありました。実際には大した内容ではなかったかもしれない。

でも、子供の私には「やらされている」という想いしかありませんでした。

家事分担などのことでよく姉妹喧嘩をしたことなんかも結びついて

「家事=いやな思い出」だったのです。

ですから、もし結婚して「いやな家事をそんな毎日毎日続けられるだろうか」

と自分に自信がなかったのです。

だからあまり結婚願望もなかったし、女の人は食事を作れて当たり前で、

女性が家事をするのも当たり前、という一般常識にも抵抗があったのです。

 

  もっと別の分野に関しては「もう、自ら気持ちよくできることしかできない」

という風に私自身感じるようになっていましたが、今まで遠ざけていた

「家事に対して」、こんなふうに複雑に思い込んでいたとは。

 

しかし、やってみるまで、いわゆる遠ざけてるうちは

「自分はきっと料理とか好きじゃないんだ」とか、

あきらめに似た思い込みが邪魔をして気が付かなかったようです。

ですから人の評価や無理をしたりすることから解放する準備は十分整って

いたにもかかわらず、実感することができなかったようです。

 

実際、一緒に暮らすことを決めたときには、そんなことは二の次になってい

ました。どんな心配事よりも「一緒になろう」という気持ちの方が、お互い

に断然強いことがはっきり確認できていましたから「なるようになる。」

ただそれだけでした。そしてなるようになったわけです。

もし自分の欠点を気にして「結婚はちょっと…」と一緒になりたい気持ちを

どこかで押さえてしまっていたら、今回のような気付きはなかったでしょう

し、今の幸せな日々も味わっていないでしょう(ちょっと大げさ?)。

 

 

今は「ご飯を作る、食べる」こんな当たり前のことが、とても楽しくて大切

なことだと感じます。(もちろん旦那さんの力も大きいです。)

 

しかも、子供のころ「やらされた」と思っていたことが、ちゃんと今に活き

ていました。結構下地ができているというか、まあ何でもそれなりに作れて

いるではないですか(多分)。

 

・・・そういえば、今思い出したのですが、小学校の時の調理実習で、包丁

の使い方や鍋の使い方などが、他の子よりちょっぴり慣れていて、先生に

ほめられたことがありました。

(当時はそんなことも記憶に残らないぐらい、嫌だったんでしょうね。)

 

今更ながら、両親にも感謝です。

 

1999.11 豊崎優子

 

 

瓦版目次へ戻る

 

 

 

よろしければご意見ご感想などをお寄せください